【ライブレポ】純邦楽によるデーモン小暮の『春琴抄』異聞!(09.03.10)

横浜・みなとみらい小ホールで行われた「純邦楽によるデーモン小暮の『春琴抄』異聞!」に
行ってきました。邦楽維新Collaborationとはまた違う今回の公演。
そして今年初めての閣下のライブであり、充実した内容となりました。



春琴抄は・・・中学かなぁ。とにかく学生時代に読みました。
当時、芥川龍之介にハマり。独特の陰鬱な世界観が好きで。
春琴抄は芥川作品とはまた違った世界観だけどこれも好きで。
倒錯的ですらある純愛が美しくすら感じました。
現実に自分がしえない経験を想像するという読書の醍醐味。

聖飢魔IIに出戻ってきて、間もない頃、
閣下の邦楽維新Collaborationの過去の演目を見てショック。
若い頃に読んで好きだった作品が多くあったんですよ。
山月記(中島敦)、耳なし芳一・牡丹灯篭(小泉八雲)、蛇性の淫(雨月物語)、
袈裟と盛遠・蜘蛛の糸(芥川龍之介)・・・陰鬱好きだな、ほんと(汗)
ちょっと違うけど、カフカの「変身」やヘッセの「車輪の下」とかも好きだし。

閑話休題。
その中でも特に見たかったのが、この「春琴抄」だったのです。
その後、関西公演では上演されたものの、見に行けず。
今回・・・やっと今回・・・ああ、嬉しい。やっと夢が叶う気分。

・・・って、どんな作品だったっけ(殴)

もちろん大筋は覚えてますよ。ただ細かい部分は記憶が曖昧。
もう一回おさらい・予習しようと、新潮文庫版を購入。
http://www.shinchosha.co.jp/book/100504/
久しぶりに読みました。やはり良い作品でした。
とはいえダメな人はダメかも(汗)特に「クライマックス」のあのシーンは。
ええ。カフカの「変身」の「果物投げつけられてグチャ」とか、
んなもんに比べ物にならない、表現力(いや、カフカも十分アレなんですけどね)
読み終わってさらに楽しみになりました。この作品を悪魔はどう表現されるのか。

今回の出演者は以下の通り。
  ・デーモン小暮閣下(語り・歌)
    http://www.demon-kogure.jp/(公式サイト)
  ・三橋貴風(プロデュース・尺八)
    http://japan.japo-net.or.jp/artist/file/mitsuhashi-kifu.shtml(関連サイト)
  ・藤井昭子(三弦および筝)
    http://japan.japo-net.or.jp/event/2006/04/03/fujiiakiko_28.shtml(関連サイト)
  ・奥田雅楽之一(筝ほか)
    http://www.utanoichi.jp/(公式サイト)
  ・外山香(二十絃筝)
    http://www.yokokyo.net/solist.html(関連サイト)

今回の楽しみは閣下の朗読ももちろんですが、藤井さんの地唄です。
藤井さんのおばあさまも地唄を。お母様は地唄の人間国宝。サラブレッドなのですね。
今回は作品中に出てくる地唄も聴けるのでは、と予想していたのです。
春琴抄には「残月」や「雪」という曲が出て来るのですが、
特に「残月」は地唄では有名な曲らしく。おぉ。それを藤井さんがされるのでは・・・
それを予習しようと地唄のCDを探したのですが見つからず(涙)
まあ演奏されるとは限らないし、会場でCD買えばいいや、と気楽にかまえ。

なお地唄については、勝手にこちらの個人サイトさんで勉強させていただきました。
よくまとまっており、内容充実。サイトマスターに多謝。
●ヘクトパスカル http://homepage2.nifty.com/setut/indexv.html

ともかく出戻ってきてよかったぁぁぁ。
・・・という気分で、今公演をずっとずっと楽しみにしていました。



【会場・開演まで】

会場は横浜みなとみらいホールの小ホール。http://www.yaf.or.jp/mmh/
客席は440席と小さめですが、その分サロンのような落ち着いた雰囲気。
音が良く響く。電気系の楽器を使用しない演目のみ上演するというスタンスが、
非常に良く理解できる会場でした(なので今回は黒船バンドは無しなのです)
トイレなど施設も清潔で、係員さんの対応も上品で丁寧。
いい意味でちょっとおすまし気分。そんな雰囲気。

客席は満席。当日券も出なかったようで。
みなとみらいホールは今年開館10周年で、
現在「海のうえの音楽会」というシリーズが行われており、
今公演はそのVol.7とのこと。
閣下ファンだけでなく、多くの邦楽ファンが来られたようです。

物販は
  ・邦楽維新グッズ(手ぬぐい、長袖シャツ、湯のみ、茶碗セット、絵馬、手ぬぐいなど)
  ・閣下CD・DVD(HMVが出張。何か購入すると「Tiaraポスター」が貰える)
  ・邦楽CD(三橋先生ほか、今回出演の皆さんのCD。でも「残月」は無かった 涙)



【演奏部分】
暗転し、ドラの音と船の音。おぉ。さすが横浜。
今回は邦楽維新ではないので「GEISHA FUJIYAMA SAMURAI」ではないのが新鮮。
閣下楽しい前説のあと、いよいよ演奏へ。

なお、上演後出演陣より演奏した曲目の説明があったのですが、
何分当方は邦楽に疎く、閣下の公演を通じてただ今勉強中です。
間違い・勘違い・誤字などあるかもしれませんが、
小学生の夏休みの宿題を見守る優しい目線でご了承を(汗)
なお曲の解説は、上演後出演者による判りやすい丁寧な説明がありました。
それに私がネットで調べた情報も加え、以下の記事にしてあります。

●松厳軒所傳 尺八古典 鈴慕(れいぼ)
オープニングは三橋さんの尺八から。
古典普化尺八の始祖・普化禅師の霊を慕う、という意味。
「鈴」を振って行化したことからこの題名が付いた。静かな悲しい曲。

ここで閣下が鈴を鳴らしながら登場。衣装は阿吽のフルセット。
会場中ほどの上手側の扉から登場、下手側通路を通って舞台に。そのまま朗読に。

●琴組歌
八橋検校という江戸時代のお琴の検校(盲官・盲人の役職)が「組歌」の元を作った。

●乱(みだれ)
佐助が登場するシーン。

●ゆき
佐助がこっそり夜中に練習するシーン。
発音は標準語の「ゆ」ではなく関西弁の「き」

●黒髪

●尾上の松
春琴が佐助に厳しく稽古をつけるシーン。三味線の合奏曲。
藤井さんが奥田さんにピシピシお稽古、という小芝居まで登場。
藤井さんは、普段はもっと厳しいそうです(汗)
奥田さんは、わざと間違えて弾くのに最初抵抗があったと(汗)
上演後楽しくそんなお話をしてくださいました。でもちゃんとお芝居になってました!

●残月
春琴が幼いうちからこんな難しい曲が弾けた、というシーン。
ああ、やっとこの曲が聴ける、と嬉しくなりました。
20分以上ある難曲だとか。今まで「春琴抄」を上演する時は一部だけだったのを、
今回は全部演奏する、というのが今回の公演の目玉のひとつ。
地唄というのは別名「三曲」といい、三絃・箏・尺八の合奏の事(昔は尺八ではなく胡弓)

静かだけど迫力のある演奏。私の勝手なイメージですが、
  白々明けていく夜にまだ天にある月が輝く(静かな演奏)
  日が昇るにつれ、風が吹き桜吹雪の中の残月(激しい演奏)
  いよいよ空が明るくなり薄れ行く月光(静かな演奏)
近所で桜が咲き始めていたので、そんなイメージが湧きました。
実際は、亡くなった女性門人の死を悼んだ内容です。
●残月 Yahoo!百科事典
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E6%AE%8B%E6%9C%88/

その途中途中で藤井さんの低い、でも伸びのある声が響く。
悲しくも凄い迫力でした。発声法が独特なような気がします。
本来この曲は尺八の音に合わせて歌う物で、
男女関係無く歌う曲でもあるので、結構低音。
藤井さん曰く、尺八が無い時はもっと低い音で歌うとの事。

歌詞は以下の通り。作曲は峰崎勾当(みねざき こうとう)
  磯辺の松に葉隠れて、沖の方へと入る月の、光や夢の世を早う。
  覚めて真如の明らけき、月の都に住むやらん。
  今は伝てだに朧夜の、月日ばかりは廻り来て。

いやはや、凄い迫力と演奏の緊張と緩和。
ロックなどとは違う「凄み」のようなものすら感じました。あっという間の20分でした。
楽しみにしていた曲だったので大満足。マジでCDとか探そうっと。

●蘇る五つの歌(外山香さんのお琴の演奏)
●根曳の松

●夕辺の雲
光崎検校の作品。「菜蕗(ふき)」という曲と合奏できるとか。それも聴いてみたい。
実らぬ辛い恋を表現した曲のようです。

●詩曲一番
松村禎三さん作曲。松村さんはクラシックの作曲家として有名だそうです。
聴いた事ある曲、と思っていたら、大阪万博の松下館の中で使うために作られた現代邦楽。
・・・ええ、薄ぼんやりとですが私は大阪万博に行った記憶がありますが。
でも今調べたら、幾何学的な東芝館の事を松下館だと思ってました。幼児期の記憶はダメだ(汗)
三橋さんいわく、将来この曲は古典邦楽として淘汰されず残っていく名曲、と。
確かに賑やかで私なんかでも聴きやすい音でした。

●夕暮ノ曲(調べたら「ノ」「の」「之」といろいろ表記違いが。正解は不明)
春琴が亡くなった時の曲。寂しい尺八の音色。

●六段
お琴で「てん、とん、しゃん」といえばコレ、みたいな超有名曲。
「六段」と「春の海」くらいは私の様な者でも知ってます。
今回は6段あるうちの初段・五段・六段を演奏されたとか。
外国人の方が演奏されている素敵な動画を見つけたのでご紹介。
http://www.youtube.com/watch?v=ykrrvaGSleA

上演後みなさんが、一曲ずつ丁寧に説明をして下さいました
あまりに丁寧で30分くらい話して、えらい事押しましたけどね(汗)



【朗読】

上記の楽曲が流れる中、閣下の朗読劇。
「春琴抄」は70ページもない短編小説。しかし物凄く密度の濃い作品といえます。
献身的な純愛はその領域を超えマゾヒズムにすら近く耽美で残酷。でも美しい。
その倒錯的ともいえる世界観が、この小説の魅力と言っていいのでしょう。

以前、閣下が芥川龍之介の「薮の中」や中島敦の「山月記」の朗読をされたのを見て、
こういうある種陰鬱な世界観の作品は閣下の朗読に合うなぁ、と思ったのですが、
この「春琴抄」は邦楽器も文中に登場するので、まさにぴったり!

朗読劇なので、いわば閣下の「一人(魔)芝居」
その演じ分けなど非常に難しいと思うのですが、違和感なく物語の世界に入れました。
(っていうか春琴の大阪弁が上手過ぎるのはいったい)

特にこの物語の「クライマックス」といえるシーンがあるのですが、
その迫力といったら。閣下ならではの表現といえるでしょう。
私は今回配られた小さいパンフレットを手に見ていたのですが、
閣下のあまりの迫力にパンフレットを握り締めてボロボロにしてしまいました(泣)
えーん。記念に大事にしようと思っていたのにぃ。

私はストーリーも知っていて、今回予習もバッチリしていったので、存分に楽しみましたが、
判りやすく構成されているので、春琴抄が初めての人でもこの内容なら楽しめると思います。

というかこの朗読劇、何らかの形で販売していただきたい。DVDとか難しいのかな。
私の持っている文庫本の「春琴抄」に寺田農さんの朗読劇カセットの宣伝が付いていて。
そういう需要って、今もあると思うんだけど。
閣下の朗読と邦楽のCD・・・ダメかなぁ。閣下ファンと邦楽ファンの両方が買うと思うけど。



【演奏・誕生日・アンコール】

朗読とその解説が終わり、一曲。
ZUTTO(WHEN THE FUTURE LOVES THE PAST~未来が過去を愛するとき~に収録)
この曲、本当に本当に大好きで。というか、好きとかそういうのを越えた曲で。
まさか今回聴けると思ってなかったので、本当に感激しました。
閣下も熱唱。心を込めて歌ってらっしゃるのが伝わり、本当に今回聴けて嬉しかったです。
邦楽器だけでの演奏でしたが、奥田さんの17弦のお琴をベースがわりにしていたのが印象的。

その後一旦退場。即、客席から手拍子(アンコール)
三橋さんたちがすぐ登場。閣下は?と思っていたらバースデーケーキを持って登場。
実は3月10日は三橋さんのお誕生日。客席も「ハッピーバースデー」を歌って祝福。
その後、ケーキを前にして出演者で写真撮影したり。

そしてアンコール曲のイントロが始まり・・・
地上の星(GIRLS'ROCK~Tiara~に収録)
これも邦楽バージョン!北欧ロックとはまた違った、静かながら凄い音の広がり!
(ついでに、歌詞も本物とはまた違っ・・・え。いえ、あの、なんでもないですよ)
でもこれは何らかの形で音源化していただきたい。凄く綺麗な音でした。



【その他エピソード】

って、いつもはこの部分がタップリあるのですが。
今回はいつもの邦楽維新Collaborationとは違うので、それ程トークもなく(曲の説明はタップリ)
また念願だった「春琴抄」の朗読、聴けて感動した「ZUTTO」など、個人的に演目そのものの印象が強く、
あんまりトークとか覚えていない(汗)それくらい充実した公演だったと思ってください。

●邦楽器だけで演奏する、と説明しつつ閣下「フォーク・ソングだ!」
そもそもFolk Songとは「民謡」の意味だし、とおっしゃりつつ「これは民謡じゃないか(汗)」

●京都のお菓子「八橋」は八橋検校がお琴で有名で、
焼き菓子を作ったとき形がお琴の形に似ているから「八ッ橋」と名付けたそうです。
八橋検校については八橋の老舗でいろいろ調べられます。
★井筒八ッ橋本舗 http://www.yatsuhashi.co.jp/ サイト内
http://www.yatsuhashi.co.jp/origin/index.html
★聖護院八ッ橋総本舗 http://www.shogoin.co.jp/ サイト内
http://www.shogoin.co.jp/kengyo.html



【雑感・感想】

いつもの邦楽維新Collaborationと比べ、より「邦楽中心」という感じでした。
今回は邦楽目当てのお客さんが多いのを見越して、トークも楽曲そのものの説明が中心で。
でも、どのシーンの曲がこれで、と説明してくださったので、判りやすかったです。
開演前に冊子が配られていて「鈴慕」「残月」「詩曲一番」の説明もあり、
「こういう曲なのね」と思いつつ聴けたのも良かったです。
邦楽好きの方にも楽しんでいただけたのでは・・・って判んないですけどね(汗)

個人的には、この数年邦楽維新Collaborationを見に行き、
こうしてレポを書いたり、事前に出演者を調べたり、あれこれしているうちに、
今回の曲の説明トークくらいなら問題なく理解できるようになってきました。
数年前だと「太棹」「17弦」ですらアウトだったでしょう。閣下や三橋さんたちのおかげです。

今回「残月」が演奏されるだろうとあれこれ音源を捜したのですが、
そもそも邦楽のCDとか売っているお店が少ない。ネットでの試聴もままならない。
もうちょっと気軽に聴ける環境があれば、もっと邦楽を身近に感じられる気がします。
三橋さんのような革新的な邦楽奏者にはMyspaceを始めるとかYouTubeに動画アップとか、
今までに無い邦楽の広め方をしていただき・・・む、無理な希望ですかね(汗)

ともあれ、ずっと楽しみにしてきた「春琴抄」を満喫し、大満足です。
存分に楽しませていただきました。ぜひまたこのメンバーで何かを。

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